復刻・岸信介「日本戦時経済の進む途」
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「昭和の妖怪」岸信介
33万人のデモ隊に囲まれた嫌われ者の正体
戦後岸信介ほど、嫌われた人はいないのではないでしょうか? 一般的なイメージは次のようなものです。
・〝右翼的な〟政策を進めた安倍晋三元総理のおじいさんであり、、、
・東京裁判ではA級戦犯の判決を下され巣鴨拘置所に入れられたのにもかかわらず、、、
・政治家に復帰し、1960年に首相として〝日本を戦争の道〟に戻しかねない日米安保改定を進めた「軍国主義者」、、、
60年安保闘争で散々「個人攻撃」を受けたが、「政策批判」は皆無…
・33万人のデモ隊がこのたったひとりの「憎き男」を打倒するために国会周辺を囲んだ(その同じ時間、セ・リーグの1、2位争いをしていた巨人 vs 中日戦に集まっていた後楽園球場の観衆が満員の4万人なので、その8倍)。
・保守的といわれる産経新聞の紙面ですら「首相は一日も早く引退せよ」(立命館総長・末川博)、「首相は深刻な反省を」(早稲田大学・吉村正教授)といった談話が載った。
・東京大学の茅誠司総長が、政府に抗議声明を出し、学生のデモ活動を容認していた。
・総理官邸だけではなく、渋谷・南平台の自宅や、山口県の郷里にまで、デモ隊が押し寄せて、石を投げられ、火をつけた新聞紙が投げ入れられた。
・総理退任後は、右翼活動家の襲撃を受け、左ももを刃物で刺され重傷を負った。
しかし、岸はこれだけの「個人攻撃」を浴びせられながら、実際のところ今日まで、この安保条約の改定を、否定的に論じる政治学者や評論家はほとんど皆無です。むしろ日米関係が安定していけるようになったと高く評価されているくらいです。
ではなぜ、こんなにも不当な反発を受けたのか?
「大東亜戦争は間違っていなかった!」
戦時中に、商工省(今の経済産業省)の大臣を務め、大日本帝国の経済政策を一手に担い、GHQの反感を買いました。
しかも岸自身は「大東亜戦争は間違っていなかった」と言っています。
岸信介はGHQを信じてはいませんでした。むしろ、日本の方が正しかったと考えていました。
その証拠に戦後ずっと、岸信介はGHQに押し付けられた憲法改正を唱え続けていました。
そのことから考えれば、GHQの占領政策なんかに対して揺らぐことのない批判的立場をもっていたことは間違いありません。
岸信介の考えは、GHQの占領期間を経ても、一貫して変わりませんでした。
そんな彼が憎かったGHQは、岸信介に「右翼の軍国主義者」というレッテル貼りをしようとしました。
だから、大東亜戦争初期、1942年4月20日に発行された岸信介の本を禁書指定し、世の中から没収してしまいました。
こうして岸信介はGHQに操作された日本では、嫌われ者となったのです…
しかし、よく考えてみれば不思議ではありませんか?
本当に岸信介が極右の軍国主義者なら、なぜGHQはその〝醜態〟を後世の日本人から隠すようなことをしたのでしょうか?
そこにこそ、戦前日本のヒントが隠されているのではないでしょうか・・・?
この男を抜きに昭和は語れない
岸信介は、東大法学部トップの秀才であり、商工省(今の経済産業省)のエリート官僚でした。
戦前、二流官庁とみられていた商工省を、大蔵省にも匹敵するような勢力にしました。
満州に赴任してからは、満州国成立に貢献。
東條英機、星野直樹、鮎川義介、松岡洋右らとともに「二キ三スケ」と称された満州国の実力者。
戦時中は商工省大臣として、産業統制政策を一手に担いました。
今回、私たちが発掘してきた『日本戦時経済の進む途』は、具体的な経済政策にまで精通していた岸信介が、戦時内閣の商工大臣として、どのように2000年来の歴史をもつ大日本帝国を英米から守り、発展していくことができるのかについて講演していたものをまとめたものです。
この本を読めば、次のようなことが見えてきます、、、
・「緒戦の戦果に酔うのは危険だ!」〝戦前の日本人は軍国主義に狂っていた〟という嘘…(p44〜)
・満州国経営を経験した岸信介が練り上げていた、今日の最新の経済政策を先取りしていた構想(p32〜)
・日本は英米に勝てる戦略を持っていた!大東亜戦争を「資源戦争」と位置づけると別の絵柄が見えてくる…(p23〜)
・軍国主義の大嘘…日本中のあらゆる共同組合で一致団結して動いていた(p123〜)
・直属の部下が見た岸信介の素顔:戦時内閣の大臣として「企業を統制する側」でありながら、岸信介は企業にとても歓迎されていた(p150〜)
「経済官僚三人男」の一人として名をあげ、、、満州開発の立役者「二キ三スケ」の一人に名を連ね、、、昭和の妖怪と呼ばれた大物・岸信介の貴重な戦前の史料です。
GHQに没収されたため、Amazonや一般の書店はもちろん、古書店などでもほとんど流通していません。
この本を読めば、きっと、右翼の軍国主義者の嫌われ者という岸信介のイメージが覆ることでしょう…
本書の詳細は以下の通りです。
目次
◆序 小島精一・・・p3
写真版 岸商相の筆蹟(編者に与えたるもの)・・・p4
原書・編者の言葉 永田 耀・・・p15
◆第一部 決戦態勢下の日本経済・・・p21
一 高度国防経済体制の進展と大東亜の資源・・・p23
資源解放と東亜自主経済の確立・・・p23
豊富なる大東亜の資源・・・p26
経済力の増強と資源開発・・・p28
産業人の責務益々重大・・・p30
二 当面緊急の課題・・・p32
民需物資の緩和至難・・・p32
産業再編成の強化徹底・・・p36
中小商工業の整備統合・・・p39
貿易の性格の変化・・・p40
低物価政策は堅持・・・p41
三 決戦経済への協力・・・p44
緒戦赫々の戦果に酔う勿れ・・・p44
前途は洋々、眼前の苦難に堪えよ・・・p46
経済道義の昂揚・・・p48
四 日米英開戦と中小企業再編成問題・・・p50
戦争はこれからだ・・・p50
これからは苦労の仕甲斐がある・・・p53
産業再編成の根本理由・・・p56
中小企業問題の核心・・・p59
商業再編成の積極的意義・・・p62
整理の目安をどこに置く・・・p65
商業の国家的意義に徹せよ・・・p68
◆第二部 戦時経済推進の目標・・・p73
五 戦時経済推進の目標・・・p75
生産拡充と重点主義・・・p75
生産設備の休止廃止とその活用・・・p77
低物価政策の完遂・・・p78
貿易の再編成と圏内物資の交流・・・p81
中小商工業再編成の目標・・・p83
統制会の根本理念・・・p85
六 戦時経済の進行と経済界・・・p88
時局緊迫と国力の結集・・・p88
時艱突破に官民の決意は固し・・・p89
統制会の強化と産業界・・・p91
経済界の一層の協力を望む・・・p93
七 東亜共栄圏建設と産業の再編成・・・p98
英米依存の脱却・・・p98
生産力昂揚は重点主義で・・・p100
重要産業団体令の運用・・・p102
産業設備営団の設立・・・p104
中小企業の再編成・・・p106
◆第三部 経済新体制とは何か・・・p111
八 経済新体制とは何か・・・p113
新体制性格決定のポイントの所在・・・p113
既存生産組織はその極限に達した・・・p115
対立分立より協力へ・・・p119
官民一致体制の完成・・・p123
官は計画立案を、民は生産の実行を・・・p126
指導者原理の確立・・・p128
九 高度国防国家建設と統制会の任務・・・p128
統制会は戦時経済の中核である・・・p132
必需物資の確保と生産総力の発揮・・・p134
官民協力と統制会・・・p137
民間の知識経験の積極的動員・・・p139
十 国士的経済人たれ・・・p142
新体制と鉄鋼統制会・・・p142
鉄鋼統制会の性格と任務・・・p144
国士的経済人たれ・・・p145
溌刺たる民間創意の発揮を・・・p147
◆岸商工大臣について(永田 耀)・・・p150
一 三羽烏の随一・・・p150
二 岸商相と革新思潮・・・p152
三 満洲国における岸商相・・・p155
四 次官時代の岸商相・・・p159
五 次官に就任す・・・p164
六 商工大臣となる・・・p168
七 怪腕の冴え・・・p171
八 人間岸信介・・・p175
九 博識と造詣・・・p179
十 情詛に厚き岸商相・・・p183
十一 むすび・・・p187