復刻・二千六百年史抄

文芸春秋の創業者・菊池寛が残した大衆向け・歴史教科書を復刊!

 

この『二千六百年史抄』を読むことは、長い日本史をまるっと学ぶのに最短の方法です。

著者の菊池寛は本書の冒頭に、こう記しています。

 

今年の初 、内閣情報部が発行している「週報」から、最も簡単な日本歴史を書いてくれとの注文を受けた。
多くの史学者に頼まず、僕を選んだのは、なるべく大衆に読ませようとの意図からであろう

昭和十五年七月二十八日

 

なので、実は本書は日本史の2600年間を捉えているのにもかかわらず、たったの151ページしかありません。しかし、だからこそ、本当に日本人に知って欲しい大切な部分だけに絞って、菊池寛は本書を執筆しています。ただ乱暴に端折られた日本史の本でなかったからこそ、GHQに目をつけられ、全国で発禁、没収される羽目になりました・・・

つまり、本書には、アメリカが日本人に知られたくない日本史2600年のエッセンスが凝縮して詰まっているのです。

目次

 

◆物語1【神武天皇の御創業】

日本の古代史における神武天皇の壮大な旅路をたどるこの物語は、ただの伝説ではなく、私たちの生き方や歴史の理解に深い洞察を与えてくれます。この物語は、天照大神の命を受けた彦火瓊瓊杵尊(ひこほのににぎのみこと)が、九州の地に降臨してから、その子孫である神武天皇が日本全土を統一するまでの過程を描いています。

神武天皇の伝説は、日本人のアイデンティティと歴史観の形成において中心的な役割を果たしており、現代に生きる私たちにも多くの示唆を与えるものです。

この物語は、単なる歴史的記録に留まらず、日本の根底に流れる精神的骨格や民族としての団結力、天皇への尊崇といった、二千六百年を通じて日本国民性を形成してきた要素を理解するための鍵となるでしょう。

◆物語2【皇威の海外発展と支那文化の伝来】

この物語は、古代日本の歴史において、大和地方の治世とその拡大を中心に描いています。神武天皇の時代から開化天皇に至るまでの九代にわたる物語は、大和地方の経営、伊勢地方から播磨、敦賀地方までの皇化の波及を描いています。

この物語を読むことで、古代日本の統一過程と文化的進歩を理解し、日本の歴史における重要な時代を深く感じることができます。この物語は、日本の歴史を学びたいという熱意を持つ人々にとって、知識とインスピレーションの源となるでしょう。

◆物語3【氏族制度と祭政一致】

この物語は、日本の上古社会制度における氏族制度と祭政一致の特色を探求しています。古代の日本では、同じ祖先を持つ人々が団結し、祖先伝来の職業に従事していました。中臣氏や斎部氏が朝廷の祭祀を司り、物部氏や大伴氏が武将として活躍するなど、それぞれの氏族が特定の役割を担っていました。

日本の祭政一致の思想は、現代にも引き継がれている特徴であり、この物語を通じて、日本の伝統と文化の根底に流れる思想と信仰を学ぶ貴重な機会となるでしょう。

◆物語4【聖徳太子と中大兄皇子】

この物語は、日本国家の基礎を固め、文化生活に貢献した二人の偉人、聖徳太子と中大兄皇子の物語です。聖徳太子は、仏教思想と共に、隋唐の文物と諸制度を日本に導入し、国内での仏教興隆に尽力しました。

この物語を通して、聖徳太子と中大兄皇子が日本の社会、文化、政治に及ぼした影響の大きさを理解することができます。これらの偉大な業績を学ぶことは現代日本の基礎となる思想や制度の理解を深める機会となるでしょう。

◆物語5【奈良時代の文化と仏教】

この物語は、第四十三代元明天皇の時代から始まり、武蔵国秩父郡から和銅が献上され、その名をとって和銅という年号が生まれた時代の歴史です。この時代、都が平城京に移され、国内の政治と経済が一元化されました。

この時期は、銭貨の鋳造や国史、風土記の編纂が重要な出来事として挙げられます。この物語は奈良時代の社会、文化、経済、宗教の発展を理解する絶好の機会を提供します。

◆物語6【平安時代】

平安時代の開始は、第五十代桓武天皇が京都に平安京を建設したことにより、新たな政治と文化の中心地が誕生しました。この時代は、空海と最澄という重要な僧侶が日本仏教に新たな息吹を吹き込み、文化的にも多大な進展を遂げました。特に、漢文学、書道、そして源氏物語などの国文学が大きく発展し、日本文化の独自性が確立されました。

この時代の出来事は、現代日本の文化や社会構造への深い理解に繋がり、日本の過去と現在をつなぐ貴重な知識を提供します。

◆物語7【院政と武士の台頭】

平安時代末期、桓武天皇が京都に平安京を建設し、この新しい首都は、政治と文化の中心地として栄えました。この時代の象徴的な出来事として、摂政藤原道長の権勢が際立っています。

藤原氏の権勢とその後の政治の変化を知ることは、日本の歴史の流れを把握し、今日の日本社会の基盤がどのように築かれたかを理解する上で欠かせない知識となります。

◆物語8【鎌倉幕府と元寇】

平安時代から鎌倉時代にかけての日本は、政治構造が大きく変わり、武士が支配層としての地位を確立しました。

この時代を学ぶことは、日本の歴史上の重要な転換点を理解するため不可欠です。平家の栄華と滅亡、頼朝の政治手腕、さらには蒙古襲来という国難を乗り越えた日本の強さを学ぶことは、日本のアイデンティティや歴史に対する理解を深めるための鍵となります。

◆物語9【建武中興】

この物語は、元寇後の鎌倉幕府の衰退から後醍醐天皇の時代にかけての激動の時期を綴っています。元寇による莫大な戦費と戦後の論功行賞問題により、幕府の財政は窮乏し、北條氏の内紛も加わって衰退の一途をたどりました。

この時代を学ぶことで、武士たちがどのようにして政治の舞台に登場し、その後どのように変化していったのかについての理解が深まります。

◆物語10【吉野時代】

この物語は、日本史上の大転換期である建武中興の時代から足利尊氏の幕府樹立に至るまでの激動の歴史を描いています。北條氏の滅亡後、後醍醐天皇の御親政の試み、そしてその破綻と足利尊氏の台頭が鮮やかに描かれています。

利害に基づく武士の行動や政治的野心の展開など、当時の社会のリアルな側面を理解するのに役立ちます。さらに、北畠親房のような時代を代表する人物の生き様や思想が、日本の国体に与えた影響を深く学ぶことができるでしょう。

◆物語11【足利時代と海外発展】

この物語は、日本の武家政治の中心地である足利幕府の興亡を生き生きと描いています。これらを通じて、読者は政治的野望とその帰結、家族内の争い、そして日本中世の社会の混沌とした実情を学ぶことができます。また、武士階級の上昇と権力争いの背景にある人間の欲望や野望を理解するための貴重な資料となるでしょう。さらに、応仁の乱や戦国時代への移行期を学ぶことで、日本史の重要な転換点についての知識が深まります。

◆物語12【戦国時代】

この物語は、戦国時代の下剋上の風潮と、それによって影響を受けた主要な武将たちの興亡を詳細に描いています。特に、足利幕府の終焉から始まり、豊臣秀吉や徳川家康などの名だたる武将たちの台頭までを追っています。この時代の武将たちの政治的野望、戦略、そして彼らが築いた関係の複雑さを学ぶことができます。

また、武将たちの野望、戦略、そして彼らの時代を超えた影響についての洞察を得ることで、あなたは日本の歴史に対する新たな見方を得るヒントを手に入れるかもしれません。

◆物語13【信長、秀吉、家康】

この物語は、戦国時代の最も動乱と躍動に満ちた時期を生き抜いた織田信長の物語です。信長の台頭から、他の強力な武将たちとの関係、そして最終的な彼の没落まで、彼の生涯と戦略について語っています。

◆物語14【鎖国】

秀吉の朝鮮出兵は、日本の国家的なエネルギーの発現を象徴する出来事です。この歴史的瞬間は、徳川氏による鎖国政策が始まる前の日本の海外進出の勢いを反映しています。秀吉の大規模な事業、財政力の強さ、外国貿易への依存など、この時代の日本の動向を理解する上で重要なポイントです。しかし、その後の鎖国政策によって、日本の海外発展の本能は萎縮し、国内の文化は発展したものの、活気を失ってしまったのです。この知識は、今日のグローバルな世界における日本の位置づけについての新たな視点を提供するでしょう。

◆物語15【江戸幕府の構成】

徳川家康の治世と江戸幕府の制度に関するこの物語は、平和を切望していた戦乱の時代の日本社会に焦点を当てています。家康が設立した幕府は、安定と秩序を提供し、その結果、社会はこの新しい政治体制に集まっていきました。さらに、幕府の中央集権化や地方分権のバランス、参勤交代制度など、日本の歴史的な政治戦略に関する洞察を提供します。

◆物語16【尊皇思想の勃興】

この物語は、江戸幕府初期の三代将軍―家康、秀忠、家光―の統治と彼らが直面した諸問題に焦点を当てています。彼らの政治的野望、諸大名やキリシタン問題、外交政策、法制や経済の管理など、多岐にわたるテーマを探求しています。特に、皇室に対する徳川家の政略的姿勢や、その時代の民族的発展への影響を深く掘り下げています。これらの知識は現代の政治や経済の分析のヒントにもなるかもしれません。

◆物語17【国学の興隆】

この物語は、江戸時代に栄えた国学とその影響力に焦点を当てています。特に水戸光圀の史学研究が国学の復興にどのように貢献したかを詳述しています。光圀の編纂作業が古語研究の必要性を生み出し、荷田春満、賀茂真淵、本居宣長などの国学者たちの活動に大きな影響を与えたことが明らかにされています。この物語を通じて、あなたは日本の文化と言語の研究における国学の重要性を考えるヒントになります。

◆物語18【江戸幕府の衰亡】

この物語は、江戸時代の幕府政治、特に三代将軍家光の治世から綱吉、吉宗に至る政策とその社会的影響を探求しています。江戸幕府が完成した形を示したものの、綱吉の享楽主義や吉宗の改革努力など、幕府の内外の動向とその結果を語っています。江戸時代の政治と社会の仕組みを学ぶことで、歴史の深い理解とともに、現代社会への影響を考察するヒントになります。

◆物語19【勤王思想の勃興】

この物語は、江戸幕府の末期、特に家光の鎖国政策から綱吉、吉宗の時代に至るまでの日本の外交と内政の転換点を探るものです。安政の大獄、黒船来航、そしてペリー提督による日米通商条約の締結など、歴史的に重要な出来事が描かれています。この物語を通じて、外国との交渉における幕府の対応や、日本の国家アイデンティティと主権に対する国民の意識の変化を理解するヒントになるかもしれません。

◆物語20【勤王志士と薩長同盟】

この物語は、明治維新における勤王の志士たちの生涯とその功績に焦点を当てています。吉田松陰や坂本龍馬などの名前は知られていますが、彼らの背後には、同じく熱意を持って活動し、犠牲となった無名の志士たちの物語があります。この物語を読むことで、読者は歴史の裏側に隠れた英雄たちの貢献を学ぶことができます。彼らが抱いた理想、挫折、そして犠牲の意味を理解することは、現代にも通じる普遍的な価値と教訓を提供します。

◆物語21【明治維新と国体観念】

この物語は、慶応三年に発せられた明治天皇の王政復古の大号令から始まり、明治維新を形作る重要な政治的出来事を詳細に描写しています。特に、徳川慶喜の政権奉還、薩長主戦派の戦略、そして伏見鳥羽の戦いなど、日本の近代史を決定づけた瞬間が生き生きと描かれています。この物語を通じて、読者は歴史の大きな転換点である明治維新の真の意味を理解することができます。歴史上の人物たちの決断、行動、そして彼らが直面した複雑な状況を学ぶことで、今日の私たちが享受している社会や文化の基盤がどのように形成されたかを理解することができます。

◆物語22【廃藩置県と征韓論】

この時代の維新戦争は、日本の歴史における新たなページの始まりでした。

廃藩置県以後、大久保利通を中心とする政府は、新しい日本を築くために文明政策を推進しました。この政策により、国内の安定が確立され、近代日本が誕生しました。武士階級から市民まで、誰もがこの新しい時代に貢献し、変革を支えました。この情熱的な時代は、あなたの心をくすぐり、知識を深める絶好の機会になります。

◆物語23【立憲政治】

明治時代の立憲政治は、五箇条の御誓文から始まりました。この文書によって、国政に参加するための新しい仕組みが確立され、国民の声が政治に反映されるようになりました。明治時代の立憲政治は、日本の現代政治の基盤を築いた重要な時代です。歴史を学ぶことで、過去からの教訓を活かし、未来の政治に貢献するヒントになるかもしれません。

◆物語24【日露戦争以後】

明治時代から昭和時代にかけて、日本は数々の歴史的な転換点を迎えました。明治時代には日清戦争が起こり、日本の国際的な地位を確立しました。この戦争によって、日本は東洋での存在感を示し、富国強兵政策によって国力を高めました。これらの物語を学ぶことで、国家の発展と国民の団結の重要性を理解できます。