『知性の構造』解説講義:藤井聡



この本は、平成8年(1996年)、西部邁先生が57歳の時にに出版されたものです。
この本は、西部先生のその他の書籍と大いに一線を画すもので、西部先生が認識する、文字通りの「知性の構造」を84枚もの図を使いながら描写したもの。
私が読書ゼミでこの本を取り上げたのは、私にとっての本書が、西部邁先生の代表著書だと認識しているからに他なりません。
私が本書を読んだのは今からおおよそ20年ほど前の30代前半の頃。
今回の読書ゼミということで、その時以来、実に20年ぶりに本書を手に取りましたが、私のこれまでの研究者、ならびに、言論人としての活動が、如何にこの本のイメージに大きく影響を受けたのかを改めて深く認識しました。
というよりもより正確に言うなら、この「知性の構造」それ自身というよりも、この書籍に描写されている、文字通りの「知性の構造」に基づいて生涯を賭して言論活動を展開された西部邁先生の「精神の有り様」そのものに、大いに影響されたのだということを、大いに認識したのです。
実際、久方ぶりに西部先生の書籍に目を通してみて、誠に懐かしい心持ちになりました。既に他界されて3年近くが経とうとしていますが、まさに他ならぬ西部邁から紡ぎ出されたあ言葉の有り様一つ一つに触れることで、まるで久方ぶりに西場先生とご一緒したような心持ちになった次第です。
こう書くとまるで西部邁という一人の人物の個人的な精神の有り様が書かれているだけで、本書「知性の構造」には普遍性が乏しく、今更読む必要などないのではないか――と思う方が出てくるかもしれませんが、実態は正反対。西部邁進の精神とはまさに、一般的な人間には到底到達し難い普遍性、さらに言うなら「真理」に近づくため「だけ」に七転八倒した挙げ句に鍛え上げられ、形作られたものなのであり、その「知性の構造」は、真理に到達するための効果的な道しるべ、あるいはクライテリオン(基準)を万人に提供するものとなっているのです。