書籍『産業の文明論 日本的経営はなぜ世界を先導するのか?』<下>



本書は日本でも経営学の分野で読み継がれてきましたが、
この数十年の間に、「古い本」「学ぶ価値がない」と
される機会も見かけるようになりました。
それはつまり、1990年代以降、
新自由主義という思想が賞賛された時代と
ぴったり重なっています。
ドーア氏の研究は時代の主流から外され、
ほとんど誰も真剣に聞かなくなってしまったんです。
ですが、そもそも日本的経営は、
戦後の高度経済成長以前からの流れを汲んでいます。
言わば、江戸・明治・大正の頃から、100年以上の時間をかけて
積み上げられてきた「日本が豊かになるための知恵の結晶」です。
先人たちは近代化していく時代の中で世界の産業を観察し
産業革命が生み出した「人を部品として扱う工場」の問題に気付き
欧米の混乱を目の当たりにし、
日本独自の答えを、時間をかけて作り上げていったんです...
職人の技術が工場の文化をつくり、
工場の文化が企業に根付き、
企業の強みが日本社会全体に浸透していく——
まさに世代を超えた積み上げです。
それは戦争によって工場が爆撃され、
街も焼け野原にされても失われませんでした。
それなのに、そんな日本型産業を
ほんの数年、数十年の間に私たちは自らの手で
捨て去ってしまったのです。
ドーア氏がかつて観察した「英国病」の症状と、
今の日本の社会問題は、そっくりです。
処方箋は新しい改革でしょうか?
事実として、世界中の産業が憧れた場所に、
日本はすでに一度辿りついていました。
その世界が追い求めた日本型経営の原型が、
この一冊には記録されています。
何を失ったのかを理解しなければ、
何を取り戻すべきかはわからないでしょう。
・職場が「何か寂しい」と感じるけど言葉にできない
・「終身雇用は非効率」と言われるたびに違和感がある
・日本の産業や社会の行方を、立ち止まって考えたい
・ジョブ型に変われと言われても、何だか不安に思う
・子供や孫に、この悲惨な産業社会を残したくない...
もしあなたがこんな悩み・思いを抱えているなら
本書をぜひお読みください。
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九州大学大学院 比較社会文化研究院教授
施光恒先生からの推薦!
かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで言われた日本。
その強さの秘密を、英国の日本研究の第一人者だったドーアは、
いわゆる「日本型経営」や「日本型市場経済」に見出しました。
そこには、日本人が絶え間ない試行錯誤の工夫を経て築き上げてきた
「経験知」とも言うべき知恵の結晶があると彼は指摘します。
しかし、1990年代半ばから本格化した
新自由主義的に基づく「構造改革」の進展とともに、
日本は「グローバル標準」(その実、米国型の株主中心主義)への
適応を求められ、自らの強みを少しずつ手放していきました。
本書には、日本人が手放してしまった強みが記されています。
ドーアは、こうした日本の変質を憂慮し、
晩年に『幻滅』という本を著します。
けれども本書を読み直すと、彼が記録した日本の強みは、
必ずしも完全に失われたわけではなく、
今なお日本社会の底流にはどうにか
持続しているのではないかと改めて思いました。
だからこそ今、私たちが一度捨ててしまった強みを
再生するためにも、本書が復刊される意義は大きいでしょう。
本書が復刻され、多くの人に読まれることを心から期待します。